さて、ここでは先日、オフショア開発. comがベトナム訪問をした際の視察スケジュールをモデルケースとして紹介いたします。
訪問先はホーチミンの1都市で、2泊3日の旅程で現地を視察していきました。以下が実際の旅程表となります。

それぞれの訪問先で実施したことやヒアリングしたことについて、簡単にみていきましょう。
IDS Vietnam【日系オフショア開発企業】

株式会社アイディーエス社(本社:東京港区)のベトナム開発拠点であるIDS Vietnamでは、開発プロセスや教育・品質への取り組み、主要プロジェクトに関する説明、若手ITエンジニアへのインタビューを行いました。
同社は日系オフショア開発企業として、オフショア開発の壁を乗り越えるための支援を手厚く提供しています。国内のIT人材不足が大きな課題となる中、多くの企業がオフショアを選択肢の一つとして検討していますが、そこには文化・商習慣・心理的ハードルなどの壁があることが少なくありません。元々ボストンコンサルティング出身の代表が立ち上げた会社ということもあり、顧客の課題解決と成功にフォーカスしているとのこと。
例えば、開発領域だけではなく、DR(デザインレビュー)やBCPを考慮した運用回りなども、日本人プロジェクトコーディネーターがサポート。プロセス構築や標準化、オフショアを活用した内製化支援にも注力しているようです。
仕様が明確なウォーターフォール型の開発から、新規事業で要件が不明瞭なものをアジャイルで進める開発まで、支援実績も幅広く、今後はさらに対応領域を広げるためにR&Dにも積極的に取り組んでいました。
* IDS Vietnam:https://sma-labo.jp/
Splus Software【ローカル系オフショア開発企業】

Splus Softwareはローカル系のオフショア開発企業です。創業者はベトナム最大手であるFPTで日本向けのPMとして従事した経歴。そのため、同社も日本の開発案件をメインに事業を展開しています。
ローカル系のオフショア開発企業といえども、日本での長期滞在経験があるエンジニアが多数在籍していたり、大手SIerで管理職だった日本人エンジニアが管理しているようで、日本語でのコミュニケーションやプロジェクトの管理には力を入れていることがうかがえました。
またコスト面に関しては、間接費を低減することで人月単価25万円(固定)という、かなりの低価格を実現していました。日系に比べ、コストが抑えられる傾向にあるローカル系ですが、この価格はローカル系ベンダの中でもかなり安い水準です。ただ、現状は下流工程からのプロジェクトが多いようで、これから上流領域も取り組みを強化していくとのこと。
オフショア開発企業も日系・ローカル系でそれぞれ視察してみると、さまざまな特徴の違いが見えてきますね。
* Splus Software:https://splus-software.co.jp/
JETRO Vietnam
JETRO Vietnamでは、ベトナムの主な経済状況について、業種業界を問わず広くレクチャーいただきました。政治、貿易額や投資額、賃金推移、日系企業の進出動向など多様な観点から説明していただき、ベトナム現地の状況を包括的に理解することができます。
ベトナムのGDP成長率は5年間で平均6.5〜7%と高水準で、コロナの影響が大きかった2020年もASEAN諸国で唯一プラスで経済成長しています。一方で現地の人件費も上昇傾向にあり、毎年5-6%ほどは賃金が上昇している模様。コストメリットが一つの目的であるオフショア開発においては、ベトナムの立ち位置の変化を改めて感じます。人口も増加傾向にあり、IT系の大学卒業者も毎年5万人ほどいるようですが、IT系外資企業のベトナム進出も近年増加しており、人材採用も少しずつ難しくなっていくかもしれません。
実は、かつては日本からの投資が最も多かったのですが、近年は2009年のサムスン進出を皮切りに韓国系企業からの投資が集まっております。そのほか、台湾やシンガポール等もベトナムへの投資を強めており、日本のプレゼンスは相対的に下がっているようです。オフショア開発に限らず、ビジネスパートナーとしてベトナムを見るときに、かつてとは状況が変わってきていることを改めて認識する必要がありそうです。
* JETRO Vietnam:https://www.jetro.go.jp/vietnam/
ホーチミン自然科学大学

ホーチミン自然科学大学は1941年に設立された、ホーチミンの主要な理系大学です。専門領域は生物学、化学、電子および通信、環境、地質学、情報技術(IT)、数学およびコンピュータサイエンス、材料科学、海洋学、物理学などがあります。
学生数は約14000名で、うち9%ほどが大学院へ進学しているようです。大学院へ進学する人は、もちろん卒業後に就職する層も一定数いますが、さらに海外の大学へと進学し博士課程・研究職を目指す人も少なくないとか。
実際に在籍している学生の方に話を聞いてみると、情報技術(IT)や物理といった専攻が特に人気となっており、その背景としては海外での就職、あるいは、外資系企業での就職に繋がりやすいのもあるようです。
特に印象的だったのが、工学部の研究室を見学させてもらった際…ドローンやロボットがいくつも並んでおり、それらは学生だけで作り上げたとのこと。その基盤は3Dプリンターで製作しているようで、その3Dプリンター自体も学生が作ったというので、とても驚きました。
* ホーチミン自然科学大学:https://www.hcmus.edu.vn/